六十六候 雪下りて麦伸びる

晩秋に蒔いた麦の芽が雪の下で伸びるという季節らしい
のですが、京都の盆地の中に住んでいると、そんな光景
に出会った記憶がありません。
京都駅から東に行く途中、車窓から麦畑らしい光景を見
た記憶はあるのですが、あれはどこだったでしょうか。
粉にされた形ではおなじみの麦ですが、草の形で麦を見
るのは、花屋でたまに見かけるアレンジ用の青い麦か、
パン屋の店先のショーウィンドウの中くらいでしょうか。
考えて見ると、麦踏みの話を母から聞いた事があるので、
昔は母の里である京都の田舎でも麦を植えていたのかも。
踏まれて余計に強く伸び、雪の下でもへこたれないその
強さに、少しでもあやかりたいというヘタレな私です。


年の瀬の錦市場(中京区)

六十五候 さわしかの角おつる

「さわしか」というのはヘラジカを指すらしいのですが、
ニホンジカの角が落ちるのは春だったでしょうか。
ちょっと記憶が曖昧です。
余談ですが、先日「メリダとおそろしの森」というアニメを
見た時に、まるでもののけ姫に出てくる神鹿にそっくりの
大鹿が、同じような場面展開で出て来たり、青い鬼火が
コダマに何となく似ている様で、この映画は宮崎駿の影響を
受けているのではと勝手に想像しています。
鹿は日本では神様の使いとして、奈良や宮島では大事に
されていますね。
奈良の鹿は鹿せんべいを手に持っているとお辞儀をして、
おねだりしますが、じらしたりすると、時々頭突きをして
催促するので注意が必要です。
京都の山に隣接する市街地で鹿を見かける事が時々あります。
猟をする人も激減していますし、鹿が増え過ぎて山では下草
若木が鹿の食害を受けている所も多くなっているそうです。
鹿はまだまだ一般的に口にする機会はそんなにありませんが、
京都大学カンフォーラという食堂のレジに鹿カレーが置いて
あった記憶があります。
最近では京都府立植物園でも同じカレーのメニューがあると
聞きました。
一度食べてみようと思っています。




鹿 竹内栖鳳

六十四候 乃東生ず(なつかれくさしょうず)

六月に「乃東枯る」と出ていた乃東(なつかれくさ)のウツボグサが
再登場しました。
食べられる訳でも、薬草でもないのに、昔の人はなんでこんなに、
この小さな野草が気になるのか不思議です。
冬に向かって地上の草が枯れていく中で目に付いたのでしょうか。
さて、22日は一年でもっとも昼の短かい冬至ですね。
これから寒さはますます厳しくなりますが、日が長くなると思うだけで
何かとても嬉しい気がしますし、何か新しい事を始めたくなります。
とりあえず、お風呂に柚子を浮かべて、ほっこりと温まりましょう。

六十三候 さけの魚群がる

一説には、ハヤやオイカワの様な川魚を指すとも言われます。
京都の由良川には鮭が遡上するそうですが、山に囲まれた盆地
を流れる鴨川や、高野川、宇治川桂川には鮭は来ません。
そのかわり、川魚がよく釣れます。特に宇治川の寒バエ釣りは
有名です。
ちなみに最近は鴨川に魚道を設けて、天然鮎の遡上を助ける試
みも行われています。昨年は推定3万匹の鮎が市内までたどり
着いたとか。
昔の事になりますが、嵐山の上流の保津川に時々、オイカワを
釣りに出かけていました。絶好のロケーションで、釣っていると
保津川下りの船が目の前を通り過ぎます。
結構大きなオイカワが釣れたので、晩のおかずに持ち帰った事
を思い出します。

鴨川 出町柳

六十二候 熊穴にこもる

熊に出会った経験はありませんが、熊の仕業とおぼしき爪痕のつい
た木を 京都と福井の県境にある京大の芦生演習林で見かけた事が
あります。
秋の黄葉が見事な時で、テントを張る場所を探していた時でした。
森の中で熊と鉢合わせしなどしたくはありませんが、向こうも人間
などと出会いたくはないでしょう。
京都盆地の端っこに住んでいると、時々熊が出たというニュースを
聞きますが、京都の熊も冬になるとやっぱり穴に籠るのでしょうか。
同じように、寒い時を冬眠してやり過ごす動物にヤマネがいますが、
こちらは一旦眠ってしまうとちょっとの事では目を覚まさないとか。
掌の中でも眠り続けているという話を聞きました。
可愛いヤマネなら一度出会ってみたいと思います。


熊出没注意の立札 左京区

六十一候 閉塞冬となる (そらさむくふゆとなる)

紅葉も残り少なく、観光客の賑わいの途絶えたこの頃は、
年末の慌ただしさまで、ほんの短いひと時ではありますが
ほっこりとした気分になります。
人の多さに外出を控えていた所をゆっくりと見て回れる様
になるのも、今の時期ならではですね。
この頃、西高東低の気圧配置で、京都盆地ではわりと晴れ
の日が続きますが、京都府は南北に長いので、北部の日本
海側では雪の日が多くなり、文字通り冬のどんよりとした空
が続きます。
北国の人にとっての冬の寒さや雪には、私達が想像出来な
い程のご苦労があるのでしょう。
そのような状況では、例えば北欧の国の様に、美しい家具
や明るいデザインのクラフトなど、長く閉ざされた寒い冬を
いかに楽しく過ごせるかと、工夫を凝らすのも頷けます。


岩倉の民家と比叡山

六十候  橘始めて黄ばむ

ミカンが美味しい季節になりました。
自宅では垣根の代わりにミカンやレモン、キンカン、柚子などを目隠し
に植えています。
肥料も水もやらないまったくの放任栽培ですが、今年はなぜか大きく
甘いミカンが沢山なりました。酸味もきいていて、少し野性味のある味
です。
知らない間にレモンも数個なっていました。緑の実が葉と紛らわしくて
気が付かなかったようです。
この垣根の良いところは花の時期にとても良い香りがあたりに漂う事
です。
柑橘類の花の香りは心を穏やかに、前向きにしてくれる気がします。
京都の農家の庭先にはよく大きな柚子の樹が植えられていますが、
数えきれない程の柚子が収穫されないまま木に残っているのを見る
と、ちょっともったいない気がします。