四十三侯 草露白し

昼間は夏の名残が残っていても、もう朝夕は秋の風情です。
数年前、夏の終わりにキャンプした時、朝早く目が覚めて、テントから
出てみると、草地に一面の露が降りていました。
今でもその時の足元を濡らす露の冷たさの感触を思い出します。
草の露と言えば、伊勢物語の芥川の段で、高貴な女性を男が宮中から
連れ出して駆け落ちをするというエピソードが出てきますが、その時、
女性が草に置く露を見て、あれは何?真珠?と聞いたという場面があり
ます。いかにも深窓のお姫様ということを物語る情景として、ちょっと
現実離れした話ではありますが、、、
その後、二人は芥川という川のほとりにある廃屋に隠れ、男が戸口に立
って見張っている間に、姫は鬼に食われてしまいます。
このお話は実際のスキャンダルとして、在原業平と後に皇后となる藤原
高子がモデルと言われています。
鬼に例えられているのは、取り返しに来た姫の兄の事だとか。
草の露の様に儚い恋のお話です。